童話少年-NOT YET KNOWN-


一瞬、人形でも置いてあるのかと思った。
昔は玩具工場だったというのを無意識に念頭においてのことだったのかはわからないが、それほどに血の気のない、灰色の顔をしていたのだ。
しかしすぐに、その薄ら笑いが人工物では有り得ないことに気付く。
明らかに、弥桃たち4人を見下ろしていたからだ。

言葉が出なかった。
雉世は確かに鬼道と呼んだ。
この今にも古い粘土細工のようにぼろぼろと崩れて粉々になりそうな年寄りを、鬼道と呼んだ。

五感が全て閉ざされた気がして、何にも反応できない。
そんな沈黙を破ったのは、彼だった。

「久しぶりだな、高城の息子。……雉世、だったか、名前は」

高城というのは雉世の父親、テログループのリーダーだった人物の、名前だろう。
老人とはいっても外見は60歳代の半ばを越えたくらいに見えたが、枯れた声は今にも血を吐きそうなほど衰弱しているように聞こえる。
時折ごほごほと咳き込みながらも、何も言わない4人に向かって話し続けた。

「秋山涓斗、妹が寝言で呼び続けていたぞ。央神紗散、両親はここの代表……いや、元代表か……あの事故は話題になったな。それから……舘端、弥桃、か。誰にもらった名前か知らんが」

ゆっくりと、眼下の光景を順に眼に写しながら、傷を抉るような言葉を残していく。
さっき抉った鬼の腕の仕返しだろうか。


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