童話少年-NOT YET KNOWN-
呆然と見上げていただけの涓斗が、はっとしたように瞬きを2つ、3つして、怖々と口を開いた。
彼が本気で怯んでいるのを初めて見た弥桃は、何も言えずにいる。
「ヤヨイは…………無事、なのか?」
思ったよりも躊躇いがちに出た声が、思ったよりも響くのが、耳障りだ。
しかし、鬼道は死んだ魚のような濁った目でこちらを見下ろしたまま、涓斗に視線を移しもせずに冷たい表情を浮かべて、言う。
「こうしてお前たちが揃っているのを見ると、つくづく……ぐ、ごほっ、哀れに感じるな……高城の息子よ」
口を開くこともできずに、ただ鬼道を見ていた。
行動を起こすタイミングを完全に失った気がしている。
もし行動するチャンスがあったとして、その時には鬼道が最初に口を開いた瞬間に何の躊躇もなく飛びかかっていけたかどうか、そしてその後は一体何をするのか、想像するのも億劫だった。
しかし、できるなら彼が姿を表したその瞬間にそうしておくべきだったと、彼らは思うことになるのである。