童話少年-NOT YET KNOWN-
「あらー、久し振りじゃない3人とも」
取っ組み合いが収まってもなおもぎゃあぎゃあと言い合いを続ける2人を何とか静かにさせて店内へ入ると、いつもカウンターにいる店員のおばさんが3人に気付いて、声を上げた。
弥桃と紗散が常連なのはもはや言うまでもないことであるし、そんな彼らやヤヨイに付き合わされる涓斗もまた、顔の知れた馴染みの客なのだ。
「おばちゃんこんちわっ! きびだんごまだ残ってる?」
「あぁ、それがねぇ……もうあと1箱しかないのよねぇ。」
「えー、まじで!?」
ころころと目まぐるしく表情の変わる紗散につられてか、大袈裟に眉尻を下げるおばさん。
この店の看板商品ともいえるきびだんごは、なかなかに大きめな4口ほどのものが、1箱に3つ入り。
それなら1箱を3人で分ければ、ちょうど足りる数だ。
「しょーがねーな、そうするかー」
「うん、俺もそれでいーよ」
「じゃー俺、苺大福も買うー!」
楽しみにしていたが、仕方がない。
残っていただけまだましかと前向きに考え、その最後の1箱を手に取ろうとした、その時だった。
「あれ? 3人とも、やっぱりここに来てたんだね」