童話少年-NOT YET KNOWN-
しっぱいさく
「そうだ、ヤヨイちゃん……」
弥桃が呟くと、涓斗がぱ、と顔を上げた。
そして視線をやったのは、先ほどまで鬼道の立体映像が立っていた辺りだ。
どうやらそこだけ少し奥まっていて、暗くてはっきりとは見えないが、扉があるようだった。
さっきの爆発でまた崩れやすくなった階段を上ってその前まで行くと、扉がわずかに開いている。
偶然なのか、鬼道がわざと開けておいたのか。
一瞬警戒するが、ドアノブにも、足許や頭上にも、罠らしきものは何もない。
先ほどの鬼道(の、立体映像)の口振りからして、4人の親世代に相当な恨みを持っていたようだ。
末代までの呪い、というわけではないが、現にヤヨイを拐ったり、鬼が弥桃たちを襲うよう仕向けたりしていたのだから、何があったっておかしくはない。
開けた途端に鬼が飛びかかってくる、なんていう事態を想定して、ゆっくりと扉を開く。
しかし、彼らを襲ったのは、鬼でも、爆弾でもなかった。