童話少年-NOT YET KNOWN-
まず先頭にいた涓斗が、最初に咳き込んだ。
「うえ、んだよ、この……臭い、げほ」
「くっさ…………かはっ」
「ちょ、……どうしたの!?」
思い切り鼻で吸い込んでしまった涓斗と紗散が、苦しそうにえずいている。
雉世は袖で鼻と口を覆って2人に近づくが、様子を見る限り、ただ不快な臭いに苦しんでいるだけで、毒ガスの類というわけでもないようだ。
鬼道が直接姿を現さない時点で、少なくともこの建物内には鬼道はいないと考えられるし、近くで監督できないのにそんなに危険なものを扱うとは、思えない。
ここがダミーのアジトだった場合という可能性もあるが、鬼の調教や罠の用意など、手間がかかりすぎる。
不可解ではあるが、危険はない。
雉世はそう判断したのだが、酷く生臭い強烈な臭いに顔を顰めながら扉を大きく開け放った弥桃は、絶句した。