童話少年-NOT YET KNOWN-


秋山涓斗の妹、秋山弥生が何者かに誘拐されたのも、1年ほど前のことだ。
犯人からの接触は一切なかったが、幸い、電源の入った携帯電話を少女が所持していたことに犯人が気付かなかったために、誘拐されてから2日と半日後、隣町の外れにある廃工場で、ロッカールームに軟禁されているところを保護された。

拐われた朝、少女が風邪気味だったために、老齢の犯人は移った風邪を拗らせ、肺炎で亡くなっていた。
そうでなくても彼の体は生きていたのが不思議なほど病魔に蝕まれていて、先が短い自分の人生に絶望した犯人が衝動的に行った犯行として片付けられた。

よく刑事ドラマなんかで聞く、『被疑者死亡のまま書類送検』というやつだ。
ニュースで報じられたのは、それだけだった。


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