童話少年-NOT YET KNOWN-
あしあと
「なぁあれさー、最近ニュースでもやってるやつだよな。『オニ』?」
「『オニ』って……あの、人外強盗の?」
「そーそ、なんか、よく昔話に出てくるやつに似てんだって。ももたろーとかさ」
結局当初の目的であったきびだんごを手に入れることも叶わず、育ち盛りのよく空く小腹を満たすため、入ったファーストフード店。
ポテトをくわえながら話す紗散の横では、弥桃が退屈なのか、彼女の絡まった髪を解きながら、時たまその間から現れる木の小枝やらに僅かに眉を顰めたりしていた。
紗散と、向かいで3個目のハンバーガーの包み紙を開く涓斗との間で交わされる会話を聞いているのかいないのか、彼がそこに加わろうとする様子はほとんどない。
「弥桃はどう思う、あれ。新種の生物か、着ぐるみか」
「俺着ぐるみだと思う! だってあんなん、今まで見つかんなかったのオカシイじゃん!」
「あーハイハイ、分かったから。な、弥桃?」
急に自分の名が呼ばれたことに反応し、顔を上げる。
マイペースでいつもぼーっとしているようで実は意外と鋭い彼が、どんな意見を持つか、涓斗はそれを知りたがっているのだ。
弥桃は、涓斗の紫がかった黒い瞳を見ながら、首を傾げた。
「…………きびだんご……食べたかった」
「人の話聞けよ」
慣れているのかつっこみも即座だった涓斗は、こいつに聞いたのが間違いだった、というふうに頭を振って、ハンバーガーにかじりついたのだった。