童話少年-NOT YET KNOWN-



「なぁ、昨日立ってたの、この辺だよな?」
「もーちょい右に見えたけど」
「え? 右?」
「逆だよバカ、そっちじゃねぇって」

同じ場所に同じ時間帯、違うのは元凶がいないこと。

「にしても佐津賀のやつ、今日学校来てなかったよな。くそ、胸糞悪ぃ」
「吉備団子食べ損ねたし、怪我したし」
「ほんとだよ。昨日は帰るなりセンセーに、どうしたのそんなに怪我して! ……とか質問責めに遭うし、風呂は滲みて痛ぇし、最っ悪」

今度会ったらただじゃおかねぇあいつ、とごちる紗散だが、涓斗は渋い表情を崩さない。
3人がかりでもあんな結果だったのだ、次こそは、なんて、果たして確実な勝算があるとも思えない。
彼らの中でも一番冷静に物事を考えられるだろう涓斗がいうからこそ、弥桃も紗散も口を噤むしかなかった。

「だいたいケンカに爆弾なんて反そ……」
「っ、涓斗、紗散。見て」

そんな時、ふと足許に視線を落とした弥桃が、珍しく驚きを滲ませた声を上げた。
つられて下を向いた2人も、同じく。

「……え……、」
「ちょ、何……これ」

ちょうど昨日、あの怪物が立っているのを見た辺りだ。
刻み込まれた抉り傷、大きな圧力に因って地面が沈み込んだ、要するに、足跡。


そこに残されていたのは明らかに、

巨大な獣の足跡だった。


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