童話少年-NOT YET KNOWN-
どんな顔をしたらいいか分からない時というのは、意外にも多々ある。
例えば自分にとってはさほど近しくもなかった人間が、けれど決して遠くはない人間が、急に死んだと聞かされた時。
例えば泣き喚きたくてどうしようもないのに、どうしても弱味を見せるわけにはいかない時。
例えば突然1人きりになってしまったのに、少しも涙が出てこなかった時。
そして今、まさにそんな、どう反応するのが正しいのか全く分からない状況に置かれている彼らは、沈黙を破る勇気を、しばらく経ってようやく得た。
「……お前、テロリスト、ってのは」
「僕の父親代わりだった人が、ね、正確には。だけど日常生活が一種の英才教育みたいなものだったから……昨日の爆弾も、小さいけど、手作りなんだよ。すごいでしょ…………まぁ、こんなんじゃ、テロを起こさなくてもテロリストと同じだよね」
普段はあまりない饒舌さが、どこか自嘲的と言っていい。
彼が何のつもりで、自分達にこんなことを話すのか。
それが分からないことには反応を起こすのも難しく、未だ強張って、僅かに引き攣った表情のままだ。
賭けだと言った。
「……お前、何でそんなこと、俺達に話したの」
「言ったでしょ。試したかったんだよ」
「何を、」
「君達が」
声色が心無しか荒いだ瞬間、変わらないようでいて、その眼に宿った少しの躊躇と、恐れと、諦めに、彼らは気付いてしまった。
そしてそれと同時に、「賭け」だと、そう言った雉世の真意が見えて、やっと3人は表情を付けた。