童話少年-NOT YET KNOWN-
「君達なら……僕の過去を知っても、もしかしたら」
俯いて話す雉世に、いつもの自尊や不敵さはない。
ただ自分の足許だけ見つめて、裁きを待つような体勢で、彼らの顔を見ることさえしないで。
「もしかしたら………………って、思ったけど」
「……けど……、なに」
「そんなわけ、ないか。犯罪者に関わるのなんか嫌だよね、そりゃ」
「……犯罪者、ね。テロリストだもんな」
ふぅ、と、鼻で溜め息を吐き出した気配がして、雉世はいよいよ身を固くした。
蔑まれるだろうとは、最初から予測している。
昔からそうだったのだ。
運が良ければ嘘つきの変人呼ばわり、運が悪ければ、人殺しの息子。
しかし、次には酷く辛辣な言葉で拒絶されるだろうと思っていた彼の耳に入ってきたのは、辛辣には変わりないけれど、
「だから?」
一言だった。
重苦しい声色では決してなく、かといって、あっけらかんと放ったわけでもなく。
彼らのことだから今さら怯えなどないだろうし、軽蔑の言葉をもって罵られることを予想していた雉世は、瞼を数回、瞬かせた。
「テロリストだったのは親だろ? 雉世が、何、背負うことあんの」
「……でも、知識や思想でいえば、十分危険かもしれな」
「もしお前が犯罪者になる危険があったとして、さ。そうだったら親が死んだ時に、もうなってんじゃねぇの?」
「……それは…………」
「なー雉世、お前さ」
先ほどまで明らかに浮かんでいた驚きの色は、とっくに消えている。
順応性に長けているのか、何も考えていないのか、兎に角、今度こそあっけらかんとしたふうに、紗散は言った。
「なんでそんなに自分のこと嫌いなの?」