童話少年-NOT YET KNOWN-


昼休み、適当な空き教室にて、食事中。
弥桃、雉世、紗散の3人でそんなくだらない会話をしていると、どこからともなく、金属がぶつかり、擦れ合うような音が聞こえる。
そしてその正体が姿を現すよりも早く、弥桃が言うのだ。

「あ。涓斗」

そして近付いたそれは、いかにも気だるげなリズムを止めて、がらり、引き戸を開いた。

「おーっス」
「ね、びんご」
「おー、おそよー。つかこんちわだな、今日はなしたよ」
「ん? ヤヨイが熱出したから看病してた」
「……意外とまともな理由だね」

意外ってなによお前俺をなんだと思ってんの、なんか寝坊とかただ面倒とかそんなのだと思ってた、失礼な。俺こー見えて結構真面目だから、はいはいわかってるよ。

流れるように会話が進む。
こう見えてなんて冗談のように涓斗は笑うが、実際3人が長い付き合いでいられるのは、わりとしっかりした彼のおかげでバランスが取れているのもあるのだろう、そう雉世は感じた(あくまでわりと、だ。赤やオレンジの髪色をして人に蛇睨みを寄越し特殊警棒を構えて好戦的な笑みを浮かべる中学生を、ある2人と比べない限りはまともだとは到底言えない)。

ただ、お互いに常に茶化したような振る舞いが、彼らにしか分からないであろう本気の境界をあやふやにしている気もする。
何もかも冗談のようで、何もかも真剣なよう。
それが、この数日間で彼らに対して受けた印象だった。


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