童話少年-NOT YET KNOWN-
「あいつ……雉世のやつ、ぜってーなんか隠してる」
放課後に集まったのは、弥桃の家だった。
いつも2人が入り浸っている秋山家には熱を出したヤヨイがいるのだから、行って騒音を立てるわけにはいかないからだ。
紗散の膨れっ面は、昼休みからずっと。
「鬼のこと……いや、襲われた人の話してからか?」
「んー……どこに引っ掛かったんだろーな?」
「全治3ヶ月、とか……脚やられたとか、警察の人、とか言ったあたり。たぶん」
「雉世が何か知ってるとしたら、この間言ってた……キドウ、て奴のことか。そいつとさっきの話、どっか繋がってたか?」
「わかんねーよそんなん」
「んー……」と、分かりやすく考え込むように腕を組み傾げた首を、涓斗は、不意にぱ、と戻した。
目を細め口許にはいつもの調子を取り戻して、悪戯っぽい独特の笑み。
「ちょっと舘端くん央神くん」
「あいよ」
「なに」
「知らねーことにわざわざ頭使わなくても、俺達には文明の利器ってもんがあるじゃねーですか」
「……おぉ! その通りだな秋山くん」
言うなり舘端家リビングの片隅を細やかに陣取るパソコンに向かい、束の間、かたかたとキーボードを叩く音だけが狭い部屋に響く。
しかし、被害者とキドウの名前を並べてみたり、テロや遺伝子実験など何となくな単語で検索しても、ヒットするのは全く無関係だったり、もはやどの言葉が引っ掛かってここに表示されたのかもわからないようなページばかり。
やはりさすがに無理があったか、と諦めかけ、自棄くそ混じりに『キドウ』とだけ打ち込んで、マウスがかちりと音を立てた、次の瞬間。
「ちょっ、これ!」
「すげ、大当たり……じゃね」
「……『日本民話研究の第一人者』……?」
現れたのは、求めていた情報に限りなく近付けるものかもしれなかった。
『鬼道 正志(キドウ マサシ)は、日本の歴史家、学者。
主な研究分野は日本の口承文学、つまり昔話。
昔話に出てくる妖怪、取り分け“鬼”について、非常に興味があると、自書で語っている。』