童話少年-NOT YET KNOWN-



「雉世。面貸せよ」

ただでさえ、なぜか朝のHRから姿の見える涓斗に怯えていた教室内に、戦慄が走った。
いつにも増して近寄り難いオーラをひしひしと放つ涓斗が、不機嫌そうに眉を寄せる紗散が、無表情ながらも憮然とした雰囲気を滲ませる弥桃が、雉世の前に立ったのである。
しんと静まり返った周りをちらりと一瞥して、それでも物怖じした様子は少しも見せず、雉世は言う。

「今から? もうすぐ1時間目始まるよ」
「今から。話あんだよ」

明らかに喧嘩越しで話す彼に、困ったような微笑を浮かべる。

もっとも同級生達にしてみれば苦笑どころではなく、元々対立気味だった彼らが突然つるみ出しただけでも驚愕だったというのに、また突然勝手に喧嘩して、こうも教室に威圧感をもたらされては、迷惑以外の何物でもない。
ところが本能が、口出しなどすれば何をされるか分かったものではないという偏見に満ちた信号を送っているので、当然首を突っ込む者などいやしないのだが。


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