童話少年-NOT YET KNOWN-
「……だから、分かっただろ。あの人の邪魔をしたら、ただじゃ済まされない……! あの人にとっては道徳より常識より、自分の身よりも、研究が大事なんだ」
そうでなければ彼は、元々持っていた地位に甘んじていたはずだ。
テログループに入ったのもきっと、手助けをしてくれる代わりに違法な研究をする場を設けると、約束されたからだったのだろう。
犯罪に手を染めてまで、叶えたかったのだ。
「……俺には理解できねぇよ。何でそこまでして、そんなもん作りたかったのか」
「僕にだってわからない……。あの人の考えがわかっていたら、今頃僕はここにはいないね」
「……まぁ、そうだな」
取り乱していた雉世も、幾らかは落ち着いたらしい。
だが、表情も感情も視線も曇ったままだ。
しばらくさ迷った瞳はやがて、しっかりと、だが遠慮がちに見据えた。
「君達が心配なんだよ。もう一度言う、……このことからは、手を引いて」
雉世の思いも、尤もだ。
14年の短くも濃い人生の中で初めてできた友が、わざわざ危険に関わっていくのを黙って見ていられるわけもない。
しかしその辺りの機微を、彼ら──特に彼女に分かってくれと言うことほど、無理難題は他にないだろう。
どんなに単純で、感情論に生き、そして常に刺激を求めているか、雉世の理解はまだ浅かったのだ。
雉世が忠告を口にした瞬間から拳を握り俯いていた彼女に、弥桃と涓斗が少なからず危険を感じていたのは、経験からだ。
そして止めようとはしなかったのもまた、然り。