童話少年-NOT YET KNOWN-
「紗散、なに」
「え? あ……鬼な、ちっちゃかったのな、雉世が見たやつ」
「あぁ、そう、そこなんだよ。厄介だな……」
「なぁ、それってまさか、その身体能力のまま、でかくなったとか言わねぇよな……?」
尋ねているのはポーズ。
そう言う涓斗にだって、答えくらいわかっているだろう。
「多分、そうだと思う。あの時は、確かどうしても巨大化だけは、できなかったんだ。」
「へ、なんで?」
「身体が脆くてついていかないんだよ。筋力が強すぎて骨とか皮膚とかがすぐ駄目になっちゃったりするんだって」
「それが今になって、どーにかして成功しちゃったわけか……」
「うん。それも大成功だね、きっと知能も格段に上がってるよ。前は無意識の内に暴走して人を襲ったりしてたのに、今では鬼道の指示に従って行動できるまでになってる」
「うわ、それって相当やばくね?」
口調は軽い。
しかし、軽いのは口調だけだ。
雉世があれほどまでに訴えた言葉が、一層身に滲みて感じられた。
「もう後には引けないよ。……いいんだね?」
「…………あったりまえ」
再確認が、儀式のようだ。
そしてこれまでだって十分に、文字通り痛いくらいに感じてきたこの感覚を、近い将来身を裂くほどに痛感すると、この時の彼らはまだ、知らなかった。