童話少年-NOT YET KNOWN-
どういう意味だよ、と。
しばらくの沈黙の後、呟かれたのは、涓斗のその一言だけだった。
雉世の表情は珍しく、固い。
「だから……、工場の倉庫から盗まれたのは大量の火薬。それから、武器商人は爆発物専門。どう考えても可笑しいだろ?」
「そりゃ……でもだからってなんで、」
「あの人なら、実験に使うとか言い訳をつけて堂々と危険物を調達することも出来るはずだよ。なのにそれをしないっていうのは……その可能性があるってことだと思わない?」
研究を言い訳に出来ないほど大量の火薬を手に入れ、かつ入手経路を辿られることを恐れたから。
調達にわざわざ鬼を使ったのは実験の成果を試す理由の他に、世間への警告、それから危機感を抱かせるため。
あくまで伝承や言い伝えとして知られていた生物だ。
1人2人が目撃したのだったら、それは幽霊や宇宙人やツチノコと変わらない。
だが今回の怪物騒動、正体不明のおぞましい化け物を見たのは多数の人間、しかも実害まではっきりと出ている。
伝説が、突然現実味を帯びて人々に襲いかかったのだ。