童話少年-NOT YET KNOWN-



「それにね。考えてもみてよ」
「…………なに」
「これだけ大勢の人が注目してる事件なのに、だよ? 未だに真相に辿り着く気配は一向にないんだ」
「それは…………だって、極秘でしてた研究なんだし、」
「でも僕は知ってる」
「そりゃお前、鬼道がいたテログループの一員だったんだ、か……ら」

やはり相変わらずなかなか的を射ない物言いに、苛立ちからか多少早口になる、紗散だが。
言いながら自分の言葉の矛盾点に気付き、口を噤んだ。

そうだ。
鬼道が行っていた遺伝子実験のことは、例のテログループにいた人間しか知らない。
逆に言えば、テログループのメンバーだった者なら、知っているのだ。

当然のこととして、それほど多くの人数がいたわけでもないし、今はもう解散して、メンバーのほとんどは海外逃亡か、日本にいてもひっそりと身を潜めているだろう。

だが、いくらなんでも情報が少なすぎる。
今の社会、インターネットを利用すればどこからだって情報は流せるはず。
今話題の鬼についてならば尚更だ。
ひょっとしたら多額の金を出して情報を買いたい人だっているかもしれないし、更に言えばそれを材料に警察と取り引きをすることだってできるかもしれない、のに。
少なくとも弥桃達が興味本意で検索をかけた数日前、そんな情報は端っこすら姿を見せなかった。


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