童話少年-NOT YET KNOWN-



「わかるだろ? 誰かが、情報を操作してるんだよ。」
「誰か…………?」
「鬼道本人か、協力者がいるのかは、わからないけど。兎に角あの人が糸を引いてるのは明らかだ」
「でも……、そんなことできんの」
「できるさ。クラッキングくらい、あの人には朝飯前だよ。それに、もっと根本的、情報の発信源を特定して危害を加えに行くことすら、あの人は簡単にやってのけるよ」

雉世は意外に、感情をあまり表に出さない。
普段ずっと笑った仮面を貼り付けているせいもあるのだろうが、彼の感情の起伏は表情より、声や物言いに表れることが多いのだ。

そして今、やけに饒舌な口調は、彼の気の昂りを示していた。

「……雉世、……なんか不安なの」
「……え……?」
「そんなカオしてる。……気がする」
「……当たり前だろ」

相変わらず気の抜ける言い方の弥桃に、強張っていた雉世の表情筋は少しだけ、緊張を解いた。

本来、不安を感じない方がおかしいのだ。
大体の影は見えているとはいえ、正体もよく知れない。
先ほどの雉世の話も加えれば鬼道という男は、自分の足跡を残さないように情報を操作し、そのためにさえ自分の手は汚さない。
もしかしたら、彼にとって重大で不利な情報を握っている弥桃達のところにだって、何らかの危害を加えに来るかもしれないのだ。

敵は強大で、強力だ。


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