童話少年-NOT YET KNOWN-
水面下に激情と涙腺のゆるい幼なじみ
辺りは少しずつ、暗くなりはじめていた。
もう夏が近いとはいえ、6時を過ぎればそれも当然である。
そんな中、彼らのうちでは一番視力の低い彼が、小さく呟いた。
「ねぇ、……やっぱり警察が捜査しても何にも見つからなかったんだから、もう手がかりはないんじゃないのかな……」
やはり黙って家にいるのが落ち着かなくなって、とりあえず来てみたのは、ヤヨイのランドセルと携帯電話が発見された場所だった。
人通りが少ない、住宅地を外れた道。
歩道も無いような所だ。
こんなに危険な道を毎日のように通学路に使っていたのかと思うと、涓斗の眉間の皺も深くなる。
「ごめんな、雉世。付き合わせて」
「いや、それはいいんだけど……」
「なぁ、もうこんな時間だよ、雉世のいう通りじゃね? 真っ暗だし」
涓斗の気持ちは、痛いほどに分かる。
普段なら制する立場にいる彼がむしろ紗散達に制されていることだけを見ても、一目瞭然なのだ。
涓斗には残酷な言葉のようでも、彼の帰りが遅くなる方が今、伯母夫婦にとっては残酷だ。
「そうだよ。こんな暗かったら、けーさつだって何も見つけらんな、」
ふと、何の気なしにさ迷っていた弥桃の視線が、一点に止まる。
何か、黄緑色にぼうっと光るもの。
近付いて覗き込んでみたが、弥桃には特に変わった物とも思えず、体勢を戻した。
突然不思議な動きをした弥桃に、背後には訝しげな声が近付く。
「弥桃? どうかしたの、急に」
「え、や……別になんでもないっぽい」
「なに、……蛍光ビーズ?」
涓斗の言った通り、それは蛍光塗料の塗られた、小さなビーズのようだった。
丸みがかった星の形が、薄暗闇だからこその存在感を放っている。