童話少年-NOT YET KNOWN-
「え……あ、あれ?」
不意に上がったすっとんきょうな声は、紗散のものだった。
弥桃は顔を上げる。
真上に垂れていた夜より黒い髪は、ゆらゆらと移動して屈み込む弥桃のちょうど向かいに、同じように屈み込んだ。
毛先が地面に触れているだろうに、そんなことには気にする素振りは見せずに、首を傾ける。
「紗散? ……どうしたの」
「これ……見覚えある、気が」
「どこで!? ヤヨイのか!?」
「えと、ちょっと待って」
そう言って周りをきょろきょろと見回す紗散の動きは、跳ねるように動くポニーテールの毛先と、暗がりに浮かぶ色白の肌でしか、判別しづらい。
涓斗の焦りは、隣から伝わってきた。
そして立ち上がってうろうろしたり、電信柱の陰を覗き込んだりしてみて、やがて再び声を上げたのだ。
「あった! こっち来て、ここにもある!」