童話少年-NOT YET KNOWN-
そうして探し物を始めて、数十分。
驚くべきことに紗散の思いついた通り、ビーズが同じ場所に複数落ちていることはほとんどなく、しかもそれは徐々にある一方へと進んで行っているような気がした。
「ヤヨイちゃん……だいじょぶかな。風邪、治りかけだったのに」
ぽつりと呟く紗散の声は、今日だけでもう3回は聞いた内容。
無言でいるのは落ち着かなくて、けれど明るい話題も思い付かなくて、思わず口に出ても、必ず弥桃にしか聞こえないように。
彼女らしい焦燥と、不器用な気遣いだ。
そしてそんな紗散に、弥桃も今日だけで3回目になる答えを返した。
「平気だよ、ゼッタイ」
そんな確証はどこにも無い。
根拠もなにもない、慰めでしかないが、それでも紗散は笑ってくれた。
「だよな、」
そんなやりとりが、もう1回繰り返され、夕暮れがもう夕闇に変わる頃。
4人は、道を壁に遮られてしまった。
壁といっても、文字通りの行き止まりではない。
1個1個拾い集めながら進んできた例の蛍光ビーズが、見当たらなくなってしまったのだ。
涓斗は、ポケットに突っ込んでいた掌を開く。
そこに握られていたビーズは、18個。
来る道で見逃して素通りしてしまった可能性も考えると、もしかしたらビーズが足りなくなって、標にすることができなくなったのかもしれなかった。
「くそっ!! どこ行ったんだよ……!!」
涓斗にしてみれば、目を凝らさなければ見えないほどだった細い細い希望の光が、ぷっつりと途絶えてしまったようなものだろう。
しかも脳内では、最後に見たヤヨイの姿が止むことなくリフレインしているのだ。
いなくなった朝、まだ風邪が治りきっていないんだから寝ていろと言ったら、心配性なんだからと苦笑いした。
そんな頭の中を覗いて自分も見ることが出来たら、彼だけにかかる負担はどんなに減るだろうと考えたのは、きっと雉世だけではないはずだ。
今にも狂いだしそうな背中を見ながら、雉世は口を開いた。