童話少年-NOT YET KNOWN-





最近話題になっている事がある。

発端は、とある強盗事件だった。
町外れの大きな家に何者かが侵入し、金品を大量に盗み出して行ったのだ。
住人は縄で縛られていただけで、無傷。

ここまでならば、頻繁ではなくともよくある話かもしれない。

しかしこの事件の不思議で不気味な、一過性の話題に過ぎないものから水面下で噂され続ける話へと変わった理由は、当の犯人にある。
それは、捕縛されただけで他に危害を加えられることのなかった住人の証言によって発覚した。


『人じゃない』


確かに、自分の目ではっきり見たのだと、被害者は言ったそうだ。

2mを超える巨体を二足歩行で支え、言語らしい言葉は発さず、全身を固くて長い毛で覆われた、見たことも聞いたこともないような獣。
そんな生き物が2、3体、突然窓を破って入り込んで来たのだという。

何とも気味の悪い話だが、それがここ一ヶ月ほどで何件も起きているのだ。
被害は民家だけに限らず、商店や工場など、手当たり次第とも思える。
そしてその全てで、例の獣の姿が何体も確認されていた。

目撃証言の幾つかから、それらが何者かの指示を受けて行動するような仕草を見せていること、そして姿形には僅かな違いが見られても、共通して鋭い爪と牙、醜く恐ろしい形相、そして2mは優に超える巨体を持っていることが判明している。




一体それらは何者なのか。
それらに指示を出している人物は、誰なのか。
なぜ強奪を繰り返し、目的は何なのか。


人々は畏れ、謎は増える一方である。

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