童話少年-NOT YET KNOWN-

第2ラウンド



知能と免疫力が低く、自傷による感染症が、主な死因だった。

雉世はああ言ったが、やはり動物の本能と身体能力だけを異常に特化させたような生物だ。
戦略など持つはずもなく、相手のタイミングや動きを観察することもせずに、突っ込んでくる。
それが逆に厄介なのは、強い力と素早い動き、そして読めない挙動だろう。
現に4人がかりで、最初の一撃を与えたのは雉世だった。
間合いに入ることがあまりに困難で、危険なのだ。
飛び道具が有利なのは、否めない。

規模は小さくても爆弾だ。
左肩を庇うのは痛みからなのか、動かしづらいだけなのかはわからないが、怒りに任せたような拳が地面を抉る。
辺りを軽く揺らすほどのパワーに、もしも先ほどの紗散が本気で殴られていたらと、弥桃はぞっとした。
小柄な少女の体が浮いたあれは、鬼にとっては軽く払ったようなものだったのだ。

こんな化け物を相手に真っ向から立ち向かう気はさすがにないのか、涓斗は右膝の関節に、警棒を突き立てるように叩き込んだ。
鬼は吠えるように呻いて、振り回した爪が彼の脇腹を掠る。
引き攣れるような痛みが襲って、転がる涓斗に駆け寄った紗散が、鬼の膝でまた吹き飛ぶ。

「涓斗っ、紗散……!」
「待って、弥桃。接近戦は不利すぎる。狙うなら……目か、首か」
「げほ、……さち、平気か」
「いってぇ…………っ、あいつ、痛覚はあるみたいだな」

やはり体格と力の差は歴然だった。
どうにも攻めあぐねて距離を取るが、またいつあの脚力が活かされるか、わかったものではない。
常に半開きの口が、牙が、猟奇的だ。


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