童話少年-NOT YET KNOWN-
「────もしかして、」
「雉世。」
口を開いて、紗散を問い詰めて、両親の話を詳しく聞いて、自分の確信を強固なものにしたかった。
悪意も他意もなく、無意識に、何も考えずに、そうしてしまいそうになったのだ。
しかし、不意に、まるで呼び戻すような弥桃の声が聞こえた。
聞こえた声に我に返って、我に返った自分が今なにをしようとしたかを考えて、なにをしようとしたかを考えて背筋に冷たいものが流れた。
自分は今、彼女になにを言おうとした?
自分は今、彼女になにを聞こうとした?
なんて、残酷なことを、聞こうとした?
「…………弥桃…………」
「雉世、だめ。紗散には」
そんなこと言っちゃ。
最後まで言わなかった彼の言葉が、痛く感じた。
自分のことにはいまいち疎いくせに、弥桃は他人の、特に紗散や涓斗のことになると、信じられないほど鋭い。
それは長年の付き合いからくる経験なのか、それとも、唯一の関心事だからなのか。
そのどちらか、両方か、または他のなにかか定かではないが、とにかく、彼が誰かを止めに入るとき、その言動は必ず2人の幼馴染みを守っている。
「…………ごめん」
「雉世……弥桃? お前ら、なんの話してんだよ」
訝しむ涓斗に、ただ薄い微笑みだけ返したのもまた、そうだ。
そしてそんな弥桃が、もうなにも教えてはくれないとわかっている彼も、また。