童話少年-NOT YET KNOWN-
不意に、声にならない悲鳴が上がった。
喉が引き攣れたように、音を発することができない。
それは恐怖や怯えなどではなく、驚愕と、単なる生理的なものだった。
「、紗散!?」
懐かしげに眺めていた看板から唐突に飛び退いたその人に、比較的小さな驚きを返したのは、涓斗だ。
自分の腕にしがみつく少女の旋毛を暗闇の中見下ろして、見えない表情をわかろうとする。
けれどそれはやっぱり無駄で、結局声をかけた。
「紗散。……どうしたんだよ」
「…………っわ、びっくりしたー。あれ…………血?」
意外にもあっさりと落ち着いた紗散の口から飛び出したのは、あまりにも意外で、ある意味で想像通りで、そしてここではあまり見つけたくはないものだった。
先ほどまで目を皿にして、あんなに探し求めていたものなのに。
確認するのが、やけに億劫に感じられた。