海の果てに-君は海賊-
あたしに離せと言わんばかりに、右手を左右に振るヨク。そんなヨクに反してあたしは掴む両手に更に力を込める。
ヨ「離せ…っ、リウ!」
ヨクがそう、口にする。
リ「ご、めん…ごめんなさい」
けど、離せなかった。
…怖くて。わからなくて。
始めてみた血のついた刃物、返り血でまみれた顔…目を閉じれば浮かび上がってくる。
リ「…ッ」
ヨ「…リウ」
そんな余裕のないあたしを見て、ヨクが力を弱めた。そして、あたしに掴まれていない左手の親指であたしの目元を優しくなぞる。
ヨ「怖かった、よな…わりぃ」
歪むヨクの顔。あたしの目には溢れんばかりの涙が溜まっていることであろう。
静かに首を振り、目元を撫でる親指に右手を添えた。
リ「ごめ…っ、ごめんなさい…」
ヨ「…謝る意味がわからねぇなぁ」
あたしと目線を合わせたヨクがおちゃらけたように笑う。
…安心する、笑顔。