本物の愛
携帯の画面をまじっと見ていた。

そんな真剣に見なくても…と思うくらい。

なんだか邪魔しちゃいけない感じだったのでその場から動けなかった。

数分経った時…。

彼はぐいっと背伸びをしながら、ふと目線をあたしの方に向けた。

あ…、気付かれた。


「あっ!紅香ちゃんだ!そんなとこで突っ立ってどーしたの?」

「いや……その」

名前覚えてくれてたんだ。

一週間前に一度会っただけなのに。

「そんなとこぢゃ暑いしょ?こっちにおいで」


優しい顔してそんなこと言われたら、何も
言えなくなるよ…。

だからあたしは素直に恐る恐る近付いた。

近くに近付いて、足を止めた。

どこにいればいいのか分かんない。

あたしが何を思ったのか察してくれたらしくて篠宮唯人のとなりの床をポンポンと叩いた。


となりに座れってことかな…?

そう思ったあたしはゆっくりと腰掛けた。
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