本物の愛
擬似恋愛
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「紅香ー?」
かすみは不思議そうにあたしに声をかけた。
当たり前かもしれない。
あたし、今ぼーっとしたまま動かないでいるから。
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あたしうけちゃった…。
唯人くんは何を考えてるんだろう?
あのあと…。
『分かった。期待…してみるよ』
少し半信半疑だったけど、なんだか期待できるような気がした。
『ご期待にそえるよう頑張ります。
期限は次の春まで。いい?』
次の春まで…。
次の春まであたしは本気で人を愛せるようになっているのかな?
ちょっと、てか、かなり信じられないんだけど…。
それでも余裕そうに笑っていて。
『でも、あんまり期待はしないで。
期待されるとだめなタイプだからさ』
最後にそんなことを言っていた。
本当に人を愛せるようになってるのかな?
「べーにーかー?」
かすみの声ではっと我にかえった。
「な…なに?」
「なんか考えごとしてたしょ?」
まあ、そうなんですけど…。
あたしは苦笑いをしてスルーした。
「今日もタクと帰るんでしょ?帰り」
「…うん、まぁ」
「頑張ってね!」
「うん」
いつの間にか放課後の時間になっていた。
全然気がつかなかったよ。