本物の愛
◇次の日◇

あたしは一時間目からサボっていた。

場所はあたしのお気に入りのひかげの場所。
売店で買った、少し溶けかけているソーダ
味のアイスを片手に目をつむっていた。


アイスが溶けてしまって、崩れて地面にベシャッと落ちてしまった。

残ったのは木棒にかすかについてるアイス。

「あーあ…。まだあんまり食べてないのにもったいない」

そう言って、残りのアイスを口に含んで棒をポイッと捨てた。


「あー、紅香ちゃん!」

ひょこっと現れたのは、唯人くん。

「…ど、ども」

「おはよー…今日も暑いなぁ」

「だね」

唯人くんは何も聞くことなく、あたしのとなりに座った。

唯人くんの方を見ると、手のひらに桜の花びらが2枚のっかっていた。


「…あ、桜」

真夏なみに暑いけど、まだ春だ。

桜も咲いてるよね。

「うん、桜。学校の桜は見ごろをとっくに過ぎてるから、少し枯れてたけど花びらが降ってたからさ、頑張ってキャッチした」

「へー、キャッチすんのけっこう難しいよね?」


あたしも小学生の頃、挑戦したことがある。

大きな桜の木の下からたくさん花びらが舞っていて、頑張って掴もうとした。

けど、とれなくて諦めるしかなかった。


「難しかったよ(笑)でもちょっと楽しかったかも」

唯人くんはまたあの優しい笑顔でにっこり笑って言った。


やっぱり……きれいな顔。
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