本物の愛
「…え、誰…?」

目を開くなりそう言った。

「ごごめんなさいっ!」

「え?なんで謝ってるの?」

なんか焦って謝ってしまった。

そんなあたしを見ながら、くす、と笑っている男の人。


やっぱりきれいだ。

整っている。

左右均等でくっきり二重の目。

すらっと高い鼻。

すべすべのほんのり焼けた肌。

ピンク色の柔らかそうな唇。

なんだかそこらへんの女の子達よりは全然きれいだし…、可愛いと思う。

可愛いって…変かな?


「あたし、ここお気に入りだからよく来るの」

「そうなんだ…偶然。俺もここ気に入ってる」

「あ…同じだね」

優しそうにくすくす笑う。

温かい人だなあ…。


「名前なんてゆーの…?」

「あたしは吉永 紅香(よしながべにか)
だよ」

「紅香ちゃんね…俺は…」

「紅香っ」

背後から聞き覚えのある低い声が聞こえた。

振り向いてみると、タクだ…。

「タク……」

「お前なんだよ!?紅香は俺の女だから手、出すなよ!?」


この男の人を見た途端、顔つきが険しくなってあたしを引き寄せた。

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