本物の愛
「………樹…」
「なんかあったら俺に相談しろよ☆」
「……うん」
樹に謝らなければならない。
あたしはひどいことを繰り返して来たの。
この悲しそうに歪んだ顔が傷つけた証拠。
ごめんね…樹…。
「俺の番号とアド消してないよな?」
「あ……ごめん。消しちゃった」
別れた男のアドは必ず消していた。
「ぢゃあ今度メール送るから登録しといて!」
「うん。分かった…」
「ぢゃあ用事あるから行くな。なんかあったらいつでも言えよ」
にこっと笑って傘をさして歩き出した。
待って…!
あたしまだ謝ってない!
「樹っ!!!」
樹は立ち止まってくるりと振り返った。
「樹…あの頃ひどいこ……」
「紅香っ!ぢゃあな…」
樹はわざとあたしの話を遮った。
まるで《話すな》と言っているかのように…。
樹の姿が見えなくなった。
「…ふっ…っく…」
涙がまた溢れ出す。
自分が何に対して泣いてるのか分からなくなっちゃった。