本物の愛
樹は黙り込んでしまった。
なにが言いたいのかさっぱり分からない。
あたしはどうすることもなくただ口を閉じていた。
『紅香ってさ…』
やっと口を開いた樹。
『紅香ってやっと本気で好きな人ができたんだな』
「えっ!!?」
本気で好きな人…?
あたしが樹を…?
信じられない。
信じたくない。
「別に…好きぢゃないし」
『だって今までそんなに彼氏のことで泣くなんてなかったし。好きしかねぇだろ』
好き…?
あたし、恋してるの?
「…分かんないよ」
『紅香のこと本気にさせるなんてすごいな。またいつでも相談すれよ』
そう言って電話が切れた。
あたし、唯人のこと…?
本当に好きになっちゃったの?
この感情が【恋】というものなの?