ももいろ
谷川くんはビールを飲みながら呆れたように言った。

「おまえの家のことだよ。大事なことだろ?なんで自分のことなのにそんなボケボケなのいつも」

「あ、そうだ。オーナー、どうしよう俺」

司くんは急に困った顔になり、鶴田さんを見た。

「荷物はとりあえずここの倉庫に置かせてもらってるけど、寝泊まりはさすがにさせてもらえないし」

鶴田さんは腕組みをして渋い顔をした。

「さすがにバイトだと寮とかないだろうな…結局アパートも、いつ空くかわからなくなっちゃったしなあ」

あたしは会話に混ざるつもりはなかったけど、谷川くんが気遣って、簡単に説明してくれた。

鶴田さんの紹介で司くんが入るつもりだった格安のアパートの、部屋が空かなくなってしまったらしい。

すっかり引っ越すつもりだった司くんは、マンスリーマンションの契約を更新せずに引き払ってしまっていたから、行くところが無くなってしまったそうだ。

鶴田さんは思いついたようにあたしを見た。

「サツキちゃん、ちょっと前に部屋をシェアしてた友達は引っ越したんだよなあ」

が、すぐに首を振り、

「サツキちゃんは女の子だしなあ、ダメだよなあ」

とがっくりうなだれた。

「俺の所にしばらくいたら?と言いたいんだけど、おまえ、俺んとこ泊まると次の日声出なくなるもんなあ」

と、谷川くんもうなだれた。

不思議に思って司くんを見たら、

「猫アレルギー」

と困った顔をしてうなだれてしまった。

しばらく3人が黙ってうつむいていたので、あたしは黙って様子を見ていた。

谷川くんがぱっと顔を上げて、

「そうだ、サツキちゃん、司の住むところが見つかるまで、うちのタマ預かってくれない?」

とあたしに尋ねてきたけど、

「ごめん、あたしも猫アレルギー…」

残念な返答をするしかなく、また谷川くんをうなだれさせてしまった。

今度は鶴田さんがぱっと顔を上げて、

「そうだ、サツキちゃん、司の住むところが見つかるまで、司預かってくれない?」

とあたしに尋ねてきたから、

「いいよ」

返事をしたら、

「そうだよなあ、ダメだよなあ…って、へ!?」

鶴田さんはうなだれかけて、あたしを二度見した。
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