ももいろ
一緒に暮らす以上、仕事のことは言っておいた方がいいかなと判断したから伝えてみたけど、司くんは固まってしまった。

あたしはおそるおそる司くんの顔色をうかがったが、特に表情は変わっていなかった。

…意味、わかってるのかな?

「あの、司くん、ソープって…わかる?」

司くんはあたしをキッと睨んで声を荒げた。

「わかってるよ!どんだけ子供だと思ってるの!」

「ですよね…じゃあ、話続けますね」

「どうぞ」

「えっと、普通に働いている人とあたしが違うところは、休みが多いとこ。週に3回しか働いてないから、大体家にいるけど、あんまり気にしないでね」

司くんはコクリとうなずいた。

よしよし。ここまではOK。

今から言うことを司くんが素直に聞いてくれるかどうかが、ちょっと心配。

昨日の「ヒモ」という言葉に対する司くんの反応からして、うまく言いくるめる自信がない。

「あと、お金には全く不自由していないので」

あたしは司くんが部屋から持ってきた封筒を指さして言った。

「宿泊代とか、あなたから徴収する気はありませんから、それは引っ込めてください」

案の定、司くんは反論してきた。

「なんで?サツキさんがお金に不自由してないとか関係ないよ。ただでさえ突然来て迷惑かけてるのに、その上甘えるなんてヤダ、俺」

「いや、別に迷惑じゃないし…。ごらんの通り、家広いでしょ?司くんの部屋なんて、まったく使ってなかったし、もったいなかったのよ。逆に助かってるくらい」

司くんは首を振りながら、

「助かってるって意味わかんない」

眉間にしわを寄せて封筒をあたしに押しつけてきた。

あたしはその封筒を押し返しながらさらに続けた。

「あと、友達出てっちゃって、こんな広い家で一人なんて寂しかったし」

「友達だって、シェアしてたってことはちゃんとお金払ってたんでしょ」

しまった。逆効果だったか…。

とにかくあたしは司くんからお金を受け取るつもりはさらさらなかった。
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