ももいろ
司くんが来たところで、あたしの生活は別に変わらないし。

…さっきみたいにバスタオル一枚で家の中を歩き回るのは、できなくなるけど。

司くん、すっごい迷惑そうな顔してたな。

とにかく、一生懸命バイトして稼いだお金は、有効に使って欲しいなと思っている。

なんて言ったらこれを引っ込めてくれるんだろう?

「別にそんな長居するわけじゃないんでしょ?だから受け取れないよこれは」

「ヤダ。タダでお世話になりますなんて、ヒモみたいでヤダ」

それでも司くんの気持ちは変わらないようだ。

可愛い顔してるくせに、結構頑固なんだなあ。

特に何かしてもらおうとか思ってたわけじゃないし、できることならあたしなんかに必要以上に関わって欲しくない、干渉もして欲しくないから、ただ家にいるだけの扱いのがあたしは気楽なんだけど…

仕方がないから交換条件を出すことにした。

「タダでお世話しますなんて言ってないじゃん」

「?」

「あたし、家事とか苦手だから、司くんが家にいる間は掃除お願いしてもいい?」

「…掃除、だけ?」

お、ちょっと食いついた。

「掃除だけじゃ不満なら、家事全般お願いしちゃおうかな?」

とりあえず今だけ納得してもらえればいいやという気持ちで、無理難題を押しつけた。

司くんはバンドとバイトで忙しいから、きっとそんなことしてる時間、ないもんね。

「料理も?」

司くんは心なしか少し嬉しそうに言った。

「あ、うん。できるなら」

「わかった。じゃあ俺、サツキさんの家政夫やる」
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