ももいろ

【家政夫・2】

「調子はどーよ!?しめじ大将!」

バイト中、カウンター席からオーナーと谷川が調理場を覗き込んで大声を出した。

「…仕事中なんで」

俺は仕込みをしながら素っ気なく答えた。

開店直後にお客さんが来るのは珍しいな、と思ったらおまえらかよ。

…しめじ大将って。

っていうかオーナーはともかく、谷川。

「おまえ、練習は」

ベースとドラム、リズム隊はリズム隊で、スタジオ練習とは別に二人で音合わせたりしてるはずだ。

今日、その日だよね?

「まだ、時間あるんだよん。太田も誘ったけど、明日スタジオで聞くからいいって断られちゃった」

よしよし、さすが太田。

太田とは、うちのドラム。

俺ら3人はタメだけど、太田は職人気質で寡黙で、お調子者の谷川とは正反対のタイプだ。

昭和のお父さんってかんじ?

子供いないけどね。

静かすぎて、たまにいるのかいないのかわかんないときがあるけど。

俺も太田もあまり口がうまくないし、社交的じゃないから、バンドの営業やいろんなことは、谷川がほとんどやってる。

凄いなと思う反面、余計なことまで首を突っ込んできてうるさいと思うことがあるけど、全部ひっくるめて谷川だからね…。

「で、どうなのどうなの?恋が芽生えちゃったりしそうなかんじ?」

谷川がカウンターから身を乗り出して聞いてきた。

…うるさい。

俺は谷川を睨み付けた。

「恋ってなんだよ」

谷川は口に手を当てて目を弓形に細めて言った。

「だって、お互い独り者だし?おまえ、綺麗系、タイプだろ?」

「綺麗な女の人が嫌いな男は、あんまりいないと思うけど」

っていうか、なんか違うくない?

そういうんじゃ、ないでしょ?

俺はオーナーに助けを求める視線を送った。

谷川、黙らせてくださいよ。

と思ったら、オーナーもにやにやしている。

…なんなんだよ。

「どう?サツキちゃんと一晩過ごして」

……なに、その言い方は。

「ただ寝床を提供してもらっただけでしょ?どうもこうもないですよ」

「そうなの?サツキちゃんから、司ぁとかいって、寝込み襲われたりしなかったの?」

「…なんで俺が襲われなきゃいけないんですか」
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