ももいろ
鶴田さんはあたしより3つ年上の28歳。

音楽に詳しくて、いろんな話を聞かせてくれたり、奥さんとののろけ話や学生時代の失敗談とか、とにかく面白い人だ。

鶴田さんはサングラスを外して机の上に置き、しげしげとあたしの顔を覗き込んで、

「本当に大丈夫?顔真っ白だぞ。まああれだな、二日酔いのサツキちゃんも美人だな」

と鼻をつまみながら言った。

あたしはウーロン茶を用意して、鶴田さんの隣に腰掛けた。

「もうっ。そんなに酒臭い?」

「うん。さっきまで飲んでたんじゃないのってくらい臭い」

あたしは手で口を覆い、ハーっとしてみたが、自分ではわからない。確かに、さっきまで飲んでいたようなものだ。

「何?もしかしてホストとか行っちゃうのサツキちゃん。朝まで飲んでたとか」

「たまにはね」

鶴田さんはウーロン茶を吹きそうな勢いで驚いた。

「マジで!?うそ!冗談だったのに!」

「ホント。ストレスが溜まって我慢できなくなった時に発散しに行く感じ」

「ホストって高いんだろ?すげーな、稼いでる人は違うな」

ここの店も高いと思うんだけど…という言葉は飲み込んで、

「通ってるわけじゃないから大したこと無いよ。鶴田さんと違って独り者ですからね、どうしようもなく寂しくなったりするときもあるわけですよ」

と酒臭くないように口を押さえて喋った。

「へえー、意外。サツキちゃん、クールそうに見えるけど、寂しくなったりするんだ」

鶴田さんはしげしげとあたしの顔を眺め、さらに聞いてきた。

「ちなみに、どんくらい使っちゃったの昨日は」

あたしは指を2本立てた。

「にまん?」

「んーん。にじゅうまん」

うへええええ!鶴田さんは大袈裟にのけぞった。

…少なめに言ったのにこんなに驚かれちゃった。
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