ももいろ
「だって…なあ」

オーナーと谷川は顔を見合わせている。

「女の方から部屋に来てもいい、なんて。サツキちゃん、もしかしたらおまえのこと気に入ったんじゃないかと思ったんだけど」

オーナー…単純。

「ないですよ。家もホントに広くて、普通なら顔合わせなくても生活していけそうだし、俺が困ってたからってだけですよ」

普通なら、ね。

俺は生活リズムが普通の人とほぼ逆だし。

でもサツキさんは、職業柄?かどうかは知らないけど、家にいる時間が多いみたいだからわかんないけど…って。

ん?

オーナーはサツキさんの仕事知ってるのかな?

オーナーはゲソカラをかじりながら、

「普通なら、そうだろうなあ」

と相づちを打った。

…知ってるのかな?

谷川はなんとなく残念そうに言った。

「なんだ、おまえ気に入られたんじゃないのか」

「全然そんなんじゃないでしょ」

「ちぇ、つまんねえ。うまくいけばスポンサーゲット!とか思ってたのに。なあ、おまえがんばれよ」

「何をだよ」

っていうかスポンサーって。

「ソープ嬢がスポンサーって、いいと思ったんだけどなあ」

…!

「馬鹿じゃないの谷川」

「え?なんで?」

「谷川、TKOをヒモバンドにする気?」

俺は怒ったよ。

谷川を睨んだ。

「別にそんなのサツキさんに期待しようと思わないし。部屋を提供してくれただけでありがたいのに、そんな好き勝手言って申し訳ないと思わないわけおまえ」

今度はオーナーを睨んだ。

「大体、オーナーも無責任。気に入られたとか入られてないとか、そういうんじゃ、ないでしょ?俺にヒモになれってんですか?」

ていうかヒモって。

「絶対ヤです。大体オーナー、そんなつもりでサツキさんをライブに連れてきたわけ?…ですか?」

ムカついてきた。

「なら、残念でした。あの人、ズレてるみたいだから、そんなんにはならなさそうですよ?」

俺はどんどん言葉を続けた。

「大体、失礼でしょ?俺にもサツキさんにも。オーナーと谷川がそういうつもりなら、俺野宿します、サツキさんのところでは世話になりません」
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