ももいろ
朝9時。

あたしが伸びをしながら部屋を出ると、テーブルの上に朝食が並べてあった。

おいしそうないい匂いがリビングに充満している。

うわぁ、すご…

あたしは目を見張った。

フレンチトーストと、オムレツと、サラダ。

ホテルの朝食みたいに、綺麗に盛りつけてある。

オムレツをフォークでつついてみると、ぷるんと震えた。

「わぁ…いただきます…」

あたしは司くんの部屋にむかって手を合わせた。

…!すっごいおいしいんですけど。

何?司くん…ええ!?すごい!

あたしは感激して、素敵な朝食を堪能した。

っていうか、あれ?うちの冷蔵庫、オレンジジュースと水しか入ってなかったと思うんだけど。

それに、このお皿、初めて見るような…こんなの、うちにあったっけ?

それ以前に、うち、フライパンないんじゃ…

「ごちそうさまでした」

寝ているであろう司くんの部屋にむかって、もう一度手を合わせ、洗い物をキッチンまで持って行ったついでに、いろいろ確認してみた。

「何コレ」

冷蔵庫の中には、食材がたくさん入っているし、冷凍庫をあけたら下ごしらえの済んだ野菜や、お肉が1食分ずつラップして入れてある。

おまけに、食器やナベやフライパンが一通り揃えられていた。

バイトの日は朝帰ってくるって言ってたなあ…短時間の間に、これだけやったわけ?

主婦みたい…。

食材や食器は、きっとバイトに行く前に買ったんだろう。

大荷物を抱えて歩く司くんを想像して、ちょっと笑ってしまった。

スーパーの袋からネギがはみ出ちゃったりして…プッ、似合いすぎ。

でも、いつまでいるのかわかんないのに、こんなにいろいろ揃えてくれちゃって…もったいない。

これだけ買ってきたってことは、これだけお金使ったって事だよね?いくらぐらいだろう…。

あたしは適当な金額を封筒に入れて、「必要経費」と書いてテーブルの上に置いておいた。

これなら、受け取ってくれるよね。
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