ももいろ
「おはようございます…」

リストでマネージャーに挨拶をし、今日の予約の確認をする。

リストっていうのは、受付みたいな所。

「おはようサツキちゃん。今日は4本予約入ってるから。ご飯どうする?出前とる?」

あたしはお客さんの名前を確認した。

「ああ、佐々木さんが多分なんか買ってきてくれるから、いいです」

「そう。じゃあ今日も一日よろしくお願いします」

「お願いします」

部屋に入ってあたしはため息をついた。

司くんの作ってくれた朝ご飯で、なんとなく気分がよくなっていたのも台無しだ。


変な仕事。


いつも思う。

女の子の中には、自分の仕事にプライドを持ってやっている子もいるけど、あたしにはわからない。

ドレスに着替え、鏡を見た。

…変な顔。

あたし、こんな顔だっけ?

綺麗とか美人とかよく言われるけど、何も嬉しくない。

確かにお客さんの食いつきはいいけど、それ以外に別にいいことないし。

風俗仕事で有利な長所なんて、むしろいらない。

スタイルがいいねっていわれるけど、風俗なんて…特にマットなんて、肉体労働だから、食事の量がよっぽど多くなければ太るわけがない。

ソープ嬢で太っている子が多いのは、ピルのせいでもなんでもない。

食べ過ぎ。酒飲み過ぎ。ストレスの溜まる仕事だから、わからないでもないけれど、もう少し自己管理しっかりすればいいのに、と思う。

体を売る仕事なんだから。

あたしはたまたま、食べることに興味がないからそう思うだけかもしれないけれど…。

はあ…

ダメだな、ついこの前ホストで発散したと思ったのに、またストレス溜まってるのかな?

なるべく何も考えないようにしてるのに。

なるべく何も感じないようにしてるのに。

プルルルルル

コールが鳴った。

「…はい」

「サツキちゃん、セットできましたか?ご指名のお客様お願いします」

「…はい」

作り笑顔を貼り付けて、自分が自分でなくなる薄暗い一日が、また始まった。



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