ももいろ
洗濯機と電子レンジを決めて、予算以内で収まったので炊飯器とトースターまで買えたのが嬉しいらしく、司くんは上機嫌だ。

オーブンレンジにすればいいじゃん、と提案しようとしたが、予算オーバーになりそうだったので黙っていた。

あたしは、配送手続きを済ませて、パソコンを見ている司くんの所に行った。

「明後日の15時に、洗濯機設置しにきてくれるって」

「俺、家にいる時間だね。よし」

「明後日はあたし家にいるし、大丈夫だよ気を遣ってくれなくても…」

司くんはちらっとあたしを見て、またパソコンに視線を戻して、ぼそぼそ言った。

「危ないから俺もいる」

「は?」

危ない???

「女性の一人暮らしは、危ないんだよ」

???

「もし、配送に来た人がよからぬ人だったりしたら、危ないから、男と住んでるって思わせた方がいいよ」

プッ。

あたしは吹き出してしまった。

「司くん、考えすぎ!過保護だよ!あっははは」

司くんはムキになって言い返してきた。

「考えすぎじゃないよ!最近はおかしな人が多いからね!考えすぎぐらい考えないと、何かあってからじゃ遅いんだからね!」

…。

「司くんって、お姉さんとか妹さんとかいる?」

「…妹、いるけど」

「やっぱり。もしかして、すっごく可愛がってた?」

「…普通だよ」

そう言って司くんは、恥ずかしいのか、プイッとパソコンに視線を戻してしまった。

猫っ可愛がりしてたと見た。

…猫アレルギーだけど。プッ。

っていうかさっきから、何をそんなにパソコンばっかり見てるんだろう?

「パソコンばっかり見てるね」

「うん。今ノート持ってるけど、新しいの見てるだけで面白い」

?よくわかんない。

「パソコン、使うんだ」

「うん。作曲する時とか」

「へえ!すごい」

…。

いつもなら、「普通だよ」とか言いそうなもんなのに、ものすごく真剣に見入っている。

欲しいのかな?

「司くん、誕生日いつ?」

「10月28日…」

答えてから、しまった!という顔をして司くんはあたしを睨み付けてきた。
< 28 / 86 >

この作品をシェア

pagetop