ももいろ
「アナタまさか、余計なこと考えてないでしょうね」

「え?えへへ…ほら、これからお世話になるし?お誕生日プレゼントはいかがかしらと思ったんだけどね、まだまだ先だったね」

司くんは思いっきり眉間にしわを寄せている。

こわっ!また雷…

「もう!サツキさん変!恋人同士でもこんなに高額なものペロっとあげるあげないなんて、ならないよ!」

落とされた。

「こんなんじゃ、うっかりサツキさんと買い物なんてできない!」

司くんは、絵に書いたようにプンスカしながら、先に歩いていってしまった。

店の外に出ても、司くんはの口はまだへの字に曲がっていた。

「じゃあ俺、このままバイト行くけど…」

「うん、いってらっしゃい」

あたしはタクシーで帰ろうかな。

「何で帰りますか?」

うっ。あたし、思ってること口に出したっけ?

「えっと、そこらへんのお店見ながら、ぼちぼち地下鉄で帰ろうかなっ」

「よし。じゃあ、いってきます」

「いってらっしゃい」

怖かった…。

司くんが見えなくなってから、タクシーに乗ることもできたけど、せっかくだからちゃんと約束を守ることにした。

あ。そうだ。

久々に街に出たから、あそこに寄ろう。

いつもは文庫本を持って行って読むんだけど、今日は行くつもりしてなかったから、持ってきてないや。

あたしは本屋さんに寄ることにした。

…本くらい買っても怒られないよね…。

ちょっとドキドキしている自分に気がついて、妙におかしくなった。
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