ももいろ
「いらっしゃいませ」
あたしはお店に入って、いつも座る隅っこの席についた。
「お久しぶりですね」
マスターがお水をテーブルに置いて、笑顔で声をかけてきてくれた。
「はい」
「いつもので、よろしいですか?」
「お願いします。すいません」
クスッとマスターは笑って、カウンターに戻っていった。
ここは、コーヒーをメインに出す喫茶店。
あたしはコーヒーの味が苦手で、いつもミルクティーを頼むから、ついオーダーの時に謝ってしまう。
ここのお店に初めて連れてきてくれたのは、前部屋をシェアしていた友達の、小雪。
小雪は、最初はマスターがさわやかな男前なのが気に入って通い始めたらしいけど、お店の雰囲気が気に入って、あたしも一緒に誘うようになった。
「一回コーヒー飲んでみたら?バリスタはコーヒー苦手な人でも飲みやすいもの出してくれるよ。ねえ、マスター」
「ふふ、気が向いたらで結構ですよ」
小雪と来ていた頃は、カウンター席に座って、マスターを交えて3人で喋っていた。
彼氏と暮らし始めて、お昼の仕事と家事で忙しくなった小雪とあまり会わなくなってからも、あたしは一人でここに来る。
コーヒー、味は苦手だけど、香りはすごく好きだから、ここのお店は落ち着く。
ちょっとお喋りしたい時はカウンター席、一人でぼんやりしたい時は隅っこのテーブル席に座ることにしている。
テーブル席にいる時は、マスターは余計なことは話しかけてこない。
そういう気遣いしてくれるところも、あたしはとても気に入っている。
あたしは本屋で買ってきた恋愛小説を広げた。
自分が、風俗に入ってから、恋愛事とは無縁な生活を送っているから、そういうものを読むと
プッ
と思ってしまう。
惚れた晴れたと面倒くさいなあ、と笑ってしまう。
まるであたしには関係ない話だ。
そんな別世界の話を読みながら、お店の外に目をやる。
いろんな人が歩いている。
仲の良さそうなカップル、疲れたサラリーマン、おしゃれな女の子、騒がしそうな男の子…
これまた、別世界。
あたしはお店に入って、いつも座る隅っこの席についた。
「お久しぶりですね」
マスターがお水をテーブルに置いて、笑顔で声をかけてきてくれた。
「はい」
「いつもので、よろしいですか?」
「お願いします。すいません」
クスッとマスターは笑って、カウンターに戻っていった。
ここは、コーヒーをメインに出す喫茶店。
あたしはコーヒーの味が苦手で、いつもミルクティーを頼むから、ついオーダーの時に謝ってしまう。
ここのお店に初めて連れてきてくれたのは、前部屋をシェアしていた友達の、小雪。
小雪は、最初はマスターがさわやかな男前なのが気に入って通い始めたらしいけど、お店の雰囲気が気に入って、あたしも一緒に誘うようになった。
「一回コーヒー飲んでみたら?バリスタはコーヒー苦手な人でも飲みやすいもの出してくれるよ。ねえ、マスター」
「ふふ、気が向いたらで結構ですよ」
小雪と来ていた頃は、カウンター席に座って、マスターを交えて3人で喋っていた。
彼氏と暮らし始めて、お昼の仕事と家事で忙しくなった小雪とあまり会わなくなってからも、あたしは一人でここに来る。
コーヒー、味は苦手だけど、香りはすごく好きだから、ここのお店は落ち着く。
ちょっとお喋りしたい時はカウンター席、一人でぼんやりしたい時は隅っこのテーブル席に座ることにしている。
テーブル席にいる時は、マスターは余計なことは話しかけてこない。
そういう気遣いしてくれるところも、あたしはとても気に入っている。
あたしは本屋で買ってきた恋愛小説を広げた。
自分が、風俗に入ってから、恋愛事とは無縁な生活を送っているから、そういうものを読むと
プッ
と思ってしまう。
惚れた晴れたと面倒くさいなあ、と笑ってしまう。
まるであたしには関係ない話だ。
そんな別世界の話を読みながら、お店の外に目をやる。
いろんな人が歩いている。
仲の良さそうなカップル、疲れたサラリーマン、おしゃれな女の子、騒がしそうな男の子…
これまた、別世界。