ももいろ
いつもは、小説を読んで、疲れたら顔を上げて、人を見飽きたら小説に戻ってというペースだったけど、今日は外を眺めてボンヤリしている時間が多かったようだ。
マスターがホットミルクティーを持ってきてくれた時、
「心ここにあらずってかんじですね」
と声をかけてきた。
「あ…」
「おや。珍しいもの、持ってますね」
マスターは床に置いてあるビニール袋を見て言った。
いつもここに来る時は、仕事用のドレスや洋服を買った帰りだから、大きな紙袋を持っていることが多いけど、今日のあたしの荷物は生活感が溢れている。
洗剤と、柔軟剤。
本屋さんに寄った後、薬局を見つけたので、つい買ってしまった。
「洗濯機、買ったんです」
「あ、そうか。小雪さんが、持って行っちゃったんでしたね」
そう、あたしは司くんに声を大にして言いたい、ずっと家に洗濯機がなかったわけじゃないんだよって。
て、あ!
「マスター、洗剤って無駄遣い?」
「?」
カウンターに戻ろうとしていたマスターは、足を止めて首をかしげた。
「もしかしたら、あの子も買ってたりして。かぶっちゃってたら、怒られるかなぁ」
「あの子?今は誰かと暮らしてるんですか?」
「そうなんです。もう、すっごく口うるさい奴で。布団取り込むの忘れただけで怒るし。服全部クリーニング出してたって言っても怒るし。とにかくすぐ怒る」
あたし、干渉して欲しくないのに。
「小姑みたいなんです!でも、アイツの作るお料理は、すっごくおいしいんです悔しいことに」
マスターはおかしそうに笑っている。
あたし、なんか変なこと言ったかな。
「洗剤は、消耗品だから大丈夫だと思いますよ。それにしても、しばらく顔出さないからどうしてるのかなと思ってたんですが、楽しそうでよかった」
そう言ってマスターはカウンターに戻っていった。
…楽しそう?あたし?
確かに、家に誰かいるってだけで、寂しくはならないけど。
あたしは、ぼんやりと街を行く人たちを眺めた。
別世界。
そう、司くんも別世界の人。
きっと、司くんが持ち込んできてる外の空気が新鮮だから、あたしは楽しく感じているんだろう。
マスターがホットミルクティーを持ってきてくれた時、
「心ここにあらずってかんじですね」
と声をかけてきた。
「あ…」
「おや。珍しいもの、持ってますね」
マスターは床に置いてあるビニール袋を見て言った。
いつもここに来る時は、仕事用のドレスや洋服を買った帰りだから、大きな紙袋を持っていることが多いけど、今日のあたしの荷物は生活感が溢れている。
洗剤と、柔軟剤。
本屋さんに寄った後、薬局を見つけたので、つい買ってしまった。
「洗濯機、買ったんです」
「あ、そうか。小雪さんが、持って行っちゃったんでしたね」
そう、あたしは司くんに声を大にして言いたい、ずっと家に洗濯機がなかったわけじゃないんだよって。
て、あ!
「マスター、洗剤って無駄遣い?」
「?」
カウンターに戻ろうとしていたマスターは、足を止めて首をかしげた。
「もしかしたら、あの子も買ってたりして。かぶっちゃってたら、怒られるかなぁ」
「あの子?今は誰かと暮らしてるんですか?」
「そうなんです。もう、すっごく口うるさい奴で。布団取り込むの忘れただけで怒るし。服全部クリーニング出してたって言っても怒るし。とにかくすぐ怒る」
あたし、干渉して欲しくないのに。
「小姑みたいなんです!でも、アイツの作るお料理は、すっごくおいしいんです悔しいことに」
マスターはおかしそうに笑っている。
あたし、なんか変なこと言ったかな。
「洗剤は、消耗品だから大丈夫だと思いますよ。それにしても、しばらく顔出さないからどうしてるのかなと思ってたんですが、楽しそうでよかった」
そう言ってマスターはカウンターに戻っていった。
…楽しそう?あたし?
確かに、家に誰かいるってだけで、寂しくはならないけど。
あたしは、ぼんやりと街を行く人たちを眺めた。
別世界。
そう、司くんも別世界の人。
きっと、司くんが持ち込んできてる外の空気が新鮮だから、あたしは楽しく感じているんだろう。