ももいろ
あちぃ~。

バイトを終わった俺は、朝ご飯何にしようか考えながら歩いていた。

フレンチトーストとオムレツとサラダだと、ちょっと重いかなぁ。

さっぱりしたもののほうがいいかな。

ん?

マンションの前で、タクシーが止まっている。

後部座席から、スーツの男の肩につかまって、半分抱きかかえられるようなかんじで女の人が降りてきた。

あのスーツ。

どう見ても、ホストだよね。

この暑いのに大変だね。

って。

あれ。

女の人…サツキさんじゃん!

俺は二人に駆け寄った。

「ちょっと!サツキさん!今帰ってきたの!?」

ホスト遊びで朝帰り!?

ホストは俺を見てにやりと笑って言った。

「もしかして君が、問題の家政夫くん?」

問題って。

俺はムッとした。

「何の問題もない家政夫ですけど」

ぐったりとしているサツキさんを見た。

どんだけ飲んだのこの人。

「もう。サツキさん、部屋に行くよ」

「うぇっ…。司くん?」

サツキさんは目を半分開けて俺を見た。

ひどい顔だねもう!

「そう、司。ほら、行くよ」

俺はサツキさんをホストから引きはがそうとした。

「ヤダッ。触んないで!」

サツキさんはものすごい勢いで俺の手を振り払った。

ちょっと。

俺、今地味に凹んだんですけど。

そりゃ、好きでもない男に触られたくないんだろうけどさ。

俺はダメで、そっちのホストならいいわけ?

サツキさん、こいつのこと好きなのかな?

いや、それにしても今の、失礼でしょ俺に。

イライラしてきた。

「触んないでって。サツキさん、仕事で慣れてるんじゃないの!?」

ダメ。

俺、変なこと言い始めてる。

「そうか、俺はお客さんじゃないからね、タダではダメってことなんだね」

止まれ、俺、変。

サツキさんは、驚いた顔している。

「何言って…」

えーい、構うもんか!

「じゃあ今からサツキさんを部屋まで担いでいくけど!いくら払えばいいですか!?」

怒鳴ってから、俺はホストからサツキさんをひったくって、抱きかかえた。
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