ももいろ
シャワーから出ると、テーブルの上に用意してあったのは、そうめんだった。

「わぁっ。おいしそう」

あたしは嬉しくなった。

司くんは、無言でめんつゆの入った器を渡してきた。

「いただきまーす」

「…まーす」

…。

しばらくお互い何も喋らずに、そうめんをすすっていた。

あたしはたまりかねて提案した。

「司くん。お説教なら、先にしてくれない?」

「なんで」

「せっかく、おいしいご飯作ってくれたのにさ…こんなんじゃ、味わえないよ」

いつもなら、そう?とかいいながら、一瞬ニコっとしそうなもんなのに、

「麺ゆでただけだし」

とブスっとしたままだ。

怒ってるっていうより、へそ曲げてるっぽいなあ。

「そうじゃなくて。あたしがシャワー出るまで待っててくれたり、暑いからそうめんにしようって考えてくれた、司くんの気遣いだって、おいしくいただきたいんだけど」

「…俺はいただかれたくない」

「何よそれ」

今日は一筋縄でいきそうにないな。

あたしは少しムッとした。

「俺は食べ物でもないし、ペットでもありません」

「何言ってんの」

司くんは箸を置いてあたしを睨み付けた。

「彼氏いるのに、よく他の男と一緒に暮らせるよね」

「はい?彼氏?え?誰が?」

「さっきの、ホスト」

あたしは爆笑してしまった。

「あっははははははははは!司くん、馬鹿ー」

「馬鹿って」

「あれはタダの担当!あっはははははは」

「だったらなおさら…簡単に部屋に入れちゃダメじゃん」

「あっはははははは!部屋に入れたことないし!あっははははは!」

「…そうなの?好きとかじゃなくて?」

「そうだよー!あっははははは!」

何?ヤキモチ焼いてるみたいだよー!ありえなーい!とあたしはおどけて言おうと思ったら、

「そう。よかった」

と司くんはニコっと笑った。

…よかったって。

え?

あたしはリアクションに困ってしまった。

「よかった、サツキさん悪い男にひっかかってるわけじゃないんだね、ただ飲みに行ってるだけなんだね?」

「あ、そうそう」

そういうことか…びっくりした。

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