ももいろ
びっくりした。

まだドキドキしてる。

司くん、華奢なのに、男の子なんだなあ…。

あたしはちびちびとシャンパンを飲んでいた。

ピンポーン

インターホンが鳴った。



時計を見ると、0時28分。

こんな時間に誰だろう?

モニターを見ると、見覚えのある顔…

「谷川くん!」

-夜分恐れ入りまあす!サツキちゃん、司帰ってきてる!?

「うん、今シャワー浴びてる。とりあえず、あがってよ」

あたしはロックを解除して、玄関の前に出て谷川くんを待った。



「久しぶりっ、サツキちゃん!変な時間にごめんね!」

申し訳なさそうにしている谷川くんを、とりあえずリビングに通した。

「うっわ、すっげえ。本当に、広いねえ」

谷川くんは心底驚いたといったかんじで、きょろきょろと部屋を見回している。

「どうぞ、座って。あ、谷川くん、シャンパン飲む?」

谷川くんはソファに座り、グラスを見て複雑そうな顔をした。

「俺、車だから遠慮しとくよごめんね。これ、司、飲んだの」

「うん?飲んでた」

はあーっ。谷川くんは大きくため息をついた。

「あいつ、ライブ前3日間は、喉を気遣って酒飲まないようにしてるのに…」

あ、そうか。

ワンマン、明後日だね。

「でもそれ、グラスに半分もなかったよ?ちょっとだけだよ」

谷川くんは聞いているのかいないのか、すごく悲しそうな顔をしている。

…喧嘩でも、したのかな。

「そうだ、谷川くん、甘い物好き?」

「?うん、好き」

「よかった。ちょっと待ってて」

あたしは冷蔵庫の中から、司くんが作ってくれたババロアを出して、テーブルの上に置いた。

「これ、アイツが作ったの?」

「そう。すごいでしょ」

「すっげえ。ミントまで乗ってる」

「そう、それ、ミントベランダで育ててるみたい司くん」

「へーぇ。いただきます…って、俺が食べてもいいのかなあ」

「司くんのお料理は、元気出るよ。それに、ババロア、作り過ぎちゃったみたいで、まだたくさんあるよ。おかわりもあるよ」

谷川くんはババロアを食べながら、何があったのかを説明してくれた。

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