ももいろ
20分押して始まったライブ。

あたしは息を飲んだ。



司くんたち、上手くなってる!



前見たときも違和感なく聴けたけど、なんていうのか…


谷川くんと太田くんが、すごく安定して、まとまってる。

そこに、司くんの粒が揃ったギターが乗る。



なんていうか…気持ちイイ。



音楽に暗いあたしでも、こんなにわかるほど巧くなるなんて、

きっとすごく努力してるんだ。



司くんの歌は、相変わらず語尾にクセがあるけど、

わざとらしくなく艶っぽいし、

歌い方自体は淡泊で嫌味じゃない。




司くんがライブ用スーツをクリーニングに出すのを見て、聞いたことがある。

「他の人たちは普段着っぽいのに、どうしてスーツにネクタイなの?暑くないの?」

「暑いよ。パンツ一丁になってやろうかなーとか思うくらい」

パ…

司くんが真顔で言うから、あたしは驚いて固まってしまった。

「ん?何?サツキさん。冗談だよ。でも暑いのはホント」

「そ、そうだよね。そんなに暑いなら、なんで?」

司くんはパイナップル頭で少し胸をそらし、自慢げに言った。

「ポリシー?」

「??」

「わざわざ俺らを見にきてくれてる、お客さんへの礼儀のつもり。隣の兄ちゃんが演奏してまーす、的なノリにならないように」

「そうなんだ」

あたしが感心したら、司くんはいたずらっぽく笑った。

「なんて言うとかっこいいけど、ただかっこつけたいだけだよ」

「えー?何よ、どっちがホント?」

「両方ホント!それが俺らのスタイルです!」




司くん…

また前髪で半分顔が見えなくなってるけど

かっこいいよすごく。



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