ももいろ
「ホストは関係ないよ。司くんなんだからね」

「何が?」

「背中流してあげるって言ったのは、司くんなんだから!」

司くんは一瞬固まった。

「…え?」

「覚えてないみたいだけど」

あたしは物真似つきで続けた。

「サツキさぁん、背中流してあげるぅなんて酔っ払ってヘラヘラ言ってきたのは司くんなんだからね」

「ま、マジ?」

あわわわわ!と司くんはうろたえはじめた。

嘘!とか言ってこないところをみると、記憶ない間にいろいろおかしなことするのは、よくあることなのかもしれない。



キスも。



あたしはもう自分の感情の変化をおさえられない。

誰にでもするんだねきっと。

今度は悲しくなってきて

また涙が溢れた。


「わわ、サツキさん」

司くんはオロオロとあたしの涙を拭いた。

もうあたしは止まらない。

「キスされたのだって…大したことじゃないのに…」

ブッ

「キス。俺が」

また固まった司くんに構わず、続けた。

「あたしに触らないで司くん…あたしは汚い」

仕事云々以前に、そういうのがもう平気で、用もないのにぬるま湯から出られない自分が…

そのままズルズルきて…

今のあたしには

「職人みたいなセックスしか能がない…」

司くんは触っちゃダメだ

「司くんが汚くなる」

ダメなのがうつる



「サツキさん」



司くんは優しくあたしを抱き締めた。



触らないでって言ってるのに。

司くん

振りほどきたいのに、心地よくて、あたしはそのまま動かずにいた。

「サツキさんがたまに変だったのって、俺のせい?」

あたしは否定も肯定もしなかった。

「俺が酔っ払って、その…変なこと言ったり…キス…したから怒ってたの?」

「…わかんない」

司くんは腕にきゅうっと力を入れた。

「サツキさん、怒ってたの?そんなに嫌?俺」


…。


「別に…キスなんて頬だったし…嫌とかじゃなくて…」

論点がズレてきてるような…

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