ももいろ
「とりあえず今は、聞くだけ聞いとけ。あとでおまえらだけで、話し合って決めればいいから」

俺らはアホみたいにコクコクうなずくことしかできない。

「フッ…近藤、続けて」





「はぁ〜」

俺らは三人してため息をついた。

面談が終わってから、オーナーんとこのライブハウスに来て、ライブを見た。

今日のイベント出演バンドの一つが、名古屋から来てる奴らで、

レコ発ツアーの名古屋の対バンにいいと思うから、ぜひ見てほしいって近藤さんが。

「金鯱組」ってバンドで、音は軽くメタル寄り。

俺、すごくいいと思った。

好きだ、あいつらの音。

金鯱組と名古屋で対バン…。

すげぇ。

また三人で、ため息をついた。

「すげぇよなぁ」

「すげぇなぁ」

はぁ。

すげぇ、て言葉の意味がわかんなくなってくるくらい、俺らはそれしか言ってない。

だって…すげぇじゃん。

はぁ。



三人でアホみたいにポカーンとしていたら、

「あのー。君ら、TKO?」

後ろから、声をかけられた。

あっ。

「金鯱組の!」

ボーカルさん。

「はじめまして。僕、ボーカルの加藤です。お話、近藤さんからうかがってます」

谷川がリーダーらしく応じた。

「はじめまして、俺、TKOリーダーの谷川です。よろしく」

加藤くんは、ステージでのしゃがれたハイトーンボイスなオラオラMCとは打って変わって、

すごく礼儀正しい好青年。

「いろいろゆっくりお話したいんですけど、僕達、明日は大阪なんで、片付けたらこのまま出発なんですよ」

なんとも残念そうに言った。

大変そう…

いろいろ回るのって、そういうことなんだねぇ。

「そうなんですかぁ。残念だな。がんばってください!」

谷川、普通にしてればさわやかだね…。

「あの、突然で不躾なんですけど、僕の連絡先です。昨日のワンマン見られなかったけど、アルバム聴きました。ぜひ一緒にライブやりたいです!」

と言いながら加藤くんは谷川に、紙切れを渡した。

「ありがとう!俺らも、ぜひやりたい!すげぇうれしいです、メールします!」

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